はじめに:多様化するドッグフード市場と選択の難しさ
現代の日本では、本当にたくさんの種類のドッグフードが販売されています。
「プレミアム」「グレインフリー(穀物なし)」「国産無添加」「ヒューマングレード」など、パッケージに書かれた言葉も多様です。
愛犬を家族の一員として大切にする人が増え、フード選びにこだわる飼い主も多くなっています。
しかし、選択肢が増えたことで迷いも増え、「どれを選べばいいの?」「広告の言葉は本当?」と悩む人も少なくありません。
そんな中、世界中の獣医師や飼い主から高い支持を受けているブランドがロイヤルカナンです。
本記事では、ドッグフードとロイヤルカナンの関係を、科学的背景・歴史・批判・他ブランドとの比較など多方面からわかりやすく解説します。
ロイヤルカナンの考え方と歴史的背景
ロイヤルカナンは、ペットフード業界における「科学的栄養学(Scientific Nutrition)」という概念を確立したパイオニア的ブランドです。
その歩みは、ペットの食事を単なる“餌”から“医科学的な健康サポート”へと進化させた歴史でもあります。
1968年の創業と原点
1968年、フランス南部の小さな町・ガルドで、獣医師ジャン・カタリー博士が皮膚疾患に苦しむ犬の治療を通じて重要な発見をしました。
それは、医薬品だけでなく「食事の内容」こそが動物の健康に深く関わっているという事実です。
当時の犬用フードは、栄養バランスが不十分で品質も安定していませんでした。
博士は、犬の健康を科学的に支える新しいフードを作るために研究を重ね、穀物をベースにした特別な処方食「イエロースープ」を開発しました。
これが後に“ロイヤルカナン”というブランドの礎となります。
「Dog & Cat First」という理念
ロイヤルカナンのすべての活動の中心にあるのが、「Dog & Cat First(すべては犬と猫のために)」という理念です。
この言葉は単なるスローガンではなく、研究開発から生産、流通、販売に至るまで、企業全体を動かす指針として定着しています。
つまり、人間の都合や市場の流行ではなく、常に犬と猫の“健康に最も良い選択”を最優先するという考え方です。
この理念を支えるのが、ロイヤルカナンが重視する「科学」と「観察」です。
犬や猫の行動、食事の仕方、咀嚼のリズム、消化の特徴、さらには毛並みや排泄の状態など、膨大な観察データを蓄積し、それを科学的に分析してフード設計に反映しています。
たとえば、犬の頭の形や顎の大きさに応じて粒(キブル)の形を変えるといった工夫も、この理念の具体的な成果です。
世界的ブランドへの成長
ロイヤルカナンは1970年代から急速に成長し、1972年にはドイツ、1974年にはデンマークへと輸出を開始。
その後、ヨーロッパ全域に広がり、1980年代にはアメリカ、アジア、オセアニアへと進出しました。
現在では100か国以上で販売されており、グローバル市場で最も信頼されるプレミアムドッグフードの一つとなっています。
また、1990年代以降は「犬種別」「ライフステージ別」「健康状態別」といった多層的な製品ラインを構築しました。
このセグメンテーション戦略により、個々のペットに最適な栄養を提供できる体制を確立したのです。
科学と獣医療との連携
ロイヤルカナンは創業当初から、獣医師・ブリーダー・動物栄養学者との密接な協力関係を重視してきました。
1973年には世界初の「獣医師専用療法食」を開発し、臨床現場での栄養管理に革命をもたらしました。
これにより、ペットの病気に対して食事を“治療の一部”として位置づける考え方が広まりました。
今日では、世界各地に研究センターを設立し、獣医師と共同で臨床試験を実施しています。
これにより、製品ごとの栄養効果が科学的に検証され、エビデンスに基づく開発が可能となっています。
特にフランスのエマルグ研究センターは、ロイヤルカナンのグローバル研究拠点として知られています。
サステナビリティと倫理的責任
近年、ロイヤルカナンは環境保全と動物福祉にも積極的に取り組んでいます。
再生可能エネルギーの利用やリサイクル素材のパッケージ導入、動物実験の倫理的ガイドライン遵守など、企業としての社会的責任を重視しています。
また、製品の安全性を守るために原材料のトレーサビリティ(追跡可能性)を確立し、世界中どこで作られた製品も同じ品質を保証できるよう体制を整えています。
科学的に作られたフードの仕組みと特徴
ロイヤルカナンのドッグフードは、単なる「食事」ではなく、科学的なデータと臨床研究に基づいて設計された「栄養プログラム」です。
その開発過程には、動物栄養学、獣医学、生理学、さらには行動学まで幅広い知識が活用されています。
研究開発の体制とプロセス
ロイヤルカナンは、世界各地にある研究施設や協力大学、獣医療機関と連携して製品開発を進めています。
特にフランスのエマルグ研究センター(Centre de Recherche de l’Emargue)は、犬と猫の生理・行動・栄養吸収を専門的に研究する世界有数の施設です。
ここでは数百頭の犬猫を対象に、消化率、嗜好性、便質、被毛状態、代謝反応などを科学的に分析しています。
製品が完成するまでには、以下のプロセスが取られます。
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栄養ニーズの特定:犬種、ライフステージ(子犬・成犬・シニア)、健康状態などから必要な栄養素を特定。
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原材料の選定:各栄養素を最適に供給できる原材料を選び、栄養価・安全性・持続可能性の観点で評価。
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試作と臨床テスト:試作品を用いて、嗜好性・消化吸収・健康指標への影響を確認。
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製品化と品質保証:基準を満たした配合のみを採用し、全世界で共通の品質管理体制のもとで生産。
高精度な品質管理
ロイヤルカナンの品質管理は、食品業界の中でも極めて厳格です。
すべての工場で共通の「グローバル品質マニュアル」に基づき、
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原材料の受け入れ検査(近赤外分光分析による成分判定)
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製造中の温度・圧力・水分量のモニタリング
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最終製品の栄養成分・異物・微生物検査 が行われます。
1バッチごとに300以上の品質チェックが実施され、不合格となったものは一切出荷されません。
この徹底した品質保証が「どの国でも同じ味と安全性」を維持する基盤となっています。
キブル設計の科学
ロイヤルカナンの最大の特徴のひとつが「キブル(粒)」の設計です。
単にサイズを変えるだけでなく、犬の顎の形状、歯の並び、咀嚼のクセ、さらには食べ方のスピードまで考慮して形・厚み・密度・弾力性が設計されています。
例えば:
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チワワ:口が小さく歯が細いため、軽くて小さい円盤型の粒を採用。
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ブルドッグ:下顎が前に出ているため、平らな三角型の粒で掴みやすさを重視。
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ラブラドール・レトリバー:早食い傾向があるため、ゆっくり噛むように設計された厚めの粒。
このように、キブルそのものが「栄養学+行動学」の融合で作られているのです。
さらに、粒の食感や香りも犬の嗜好性テストを通じて最適化され、科学的に“おいしさ”を追求しています。
栄養バランスと添加物管理
ロイヤルカナンは、栄養素の「バランス」を重視します。
高タンパク・低脂肪などの単純な指標ではなく、消化吸収率・エネルギー密度・アミノ酸構成・脂肪酸比率などを総合的に考慮しています。
これにより、犬の代謝機能を最適化し、長期的な健康維持を可能にします。
保存料や酸化防止剤についても、かつて使われていたBHTやBHAなどの人工添加物を段階的に削減し、現在では天然由来成分(ビタミンE、ローズマリー抽出物など)を中心に置き換えています。
これにより、品質保持と安全性の両立が実現しています。
科学的エビデンスに基づく信頼
ロイヤルカナンのフードは、世界中の獣医師・研究機関で臨床的に評価されています。
皮膚・消化・心臓・腎臓など、特定の健康領域において実証データが蓄積されており、それらの成果は国際学会や専門誌にも多数発表されています。
単なる「ブランドイメージ」ではなく、科学的エビデンスに裏打ちされた信頼こそがロイヤルカナンの本質です。
犬の個性に合わせた豊富なラインナップ
ロイヤルカナンのドッグフードは、「すべての犬に最適な栄養を」という理念のもと、非常に多様なラインナップを展開しています。
これは単なるマーケティング上の多品種展開ではなく、犬のサイズ・年齢・犬種・健康状態・生活環境など、個体差に基づいた科学的な栄養設計を追求した結果です。
年齢(ライフステージ)による分類
犬は成長段階によって必要とする栄養素が大きく異なります。
ロイヤルカナンはそれぞれのライフステージに最適な栄養設計を行っています。
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子犬用(パピー):免疫システムの発達や骨格形成をサポートするために、たんぱく質とカルシウム、ビタミンEなどを強化。消化が未発達なため、消化吸収しやすい原材料を採用しています。
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成犬用(アダルト):活動量に合わせたエネルギー量を確保しつつ、肥満を防ぐためのバランス設計。関節や皮膚の健康維持を目的としたオメガ3脂肪酸などを配合。
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シニア犬用(エイジング・シニア):腎臓や心臓への負担を軽減するため、リンやナトリウムの量を調整。消化酵素の働きを助ける食物繊維や抗酸化成分も強化しています。
このように、ライフステージごとに異なる代謝・免疫・消化能力を考慮した精密な栄養設計が行われています。
サイズ(体格)による分類
犬の体格は栄養ニーズに大きな影響を与えます。
ロイヤルカナンでは、サイズに応じたフードシリーズ「サイズヘルスニュートリション」を展開しています。
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超小型犬(X-SMALL):体重4kg以下。代謝が非常に速く、少量でも高エネルギーな設計。歯石防止成分を配合し、歯の健康もサポート。
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小型犬(MINI):10kg以下。食欲にムラが出やすいため嗜好性を高め、毛づやを保つための栄養も強化。
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中型犬(MEDIUM):11〜25kg。活発な犬が多く、免疫維持や関節サポートを意識した配合。
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大型犬(MAXI):26〜44kg。関節・骨格への負担が大きいため、コンドロイチンやグルコサミンを配合し、心臓機能を支える成分も強化。
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超大型犬(GIANT):45kg以上。成長速度が速いため、骨の発育と心臓の健康維持に焦点を当てた特別設計。
このようにサイズ別の分類は、体重・骨格・運動量・寿命といった生理的要因に基づいており、科学的根拠のあるセグメント展開です。
犬種別フード(ブリード・ヘルス・ニュートリション)
ロイヤルカナンの代名詞とも言えるのが「犬種別フード」です。
これは犬種ごとの身体的特徴・顎の形・毛質・疾患リスクなどを分析し、それに最適な栄養設計を行ったシリーズです。
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チワワ専用:小さい顎に合わせた超小粒キブル。食いつきを高める香り付けと歯石予防成分を配合。
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プードル専用:被毛の健康を守るためにアミノ酸と脂肪酸を最適化。毛艶とカールの維持をサポート。
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柴犬専用:皮膚トラブルの多い犬種特性に合わせ、皮膚バリアを守る成分を強化。消化性も重視。
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ラブラドール・レトリバー専用:早食いを防ぐための独特なキブル形状。体重コントロールに配慮。
この犬種別設計は、世界中のブリーダーや獣医師との協働によって生まれたものであり、ロイヤルカナンのブランド哲学を象徴する部分です。
健康状態・ライフスタイル別シリーズ
ロイヤルカナンでは、健康維持やライフスタイルに合わせた「特定ニーズ対応型フード」も展開しています。
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ライトウェイトケア:肥満傾向の犬に。カロリーを抑えつつ満腹感を維持できる食物繊維を配合。
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ダーマコンフォート:皮膚アレルギーやかゆみのある犬に。オメガ6脂肪酸や抗酸化栄養素を強化。
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エクシジェント:食にこだわる犬向け。香りや味の好みに合わせて数種類の嗜好性設計。
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ステアライズド:避妊・去勢後の犬のために、脂肪蓄積を抑えつつ筋肉量を維持できる配合。
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インドアライフ:室内飼いの犬向け。運動不足による体重増加や便臭軽減に対応。
このような細やかな製品群により、ロイヤルカナンは単なる総合栄養食ブランドを超え、犬の個性を科学的に理解し、生活全体を支えるフードとして位置づけられています。
医療に近い「食事療法食」の重要性
ロイヤルカナンのブランド哲学を語る上で、最も象徴的な存在が「食事療法食(Veterinary Diet)」です。
これは、犬の健康問題を「治療」ではなく「栄養管理」という角度から支えるために開発された、医療と密接に結びついた特別なフード群です。
一般的な市販のドッグフードとは異なり、獣医師の診断と指導のもとでのみ使用されることを前提としています。
科学的根拠に基づく栄養設計
ロイヤルカナンの食事療法食は、世界中の獣医師や大学研究機関と連携して開発されています。
その設計は、「病気を治すための薬」ではなく、「体内環境を整え、治療効果を最大化する栄養介入」を目的としています。
すなわち、疾患の原因や症状を科学的に分析し、それに対応する栄養素の最適な配合を導き出すのです。
開発プロセスでは、臨床試験を通じて各疾患に対する有効性が検証されます。
腎臓病、心臓病、アレルギー、肥満、糖尿病、消化器疾患、肝臓疾患など、さまざまなケースに対応するため、現在では30種類以上の食事療法食がラインナップされています。
主なカテゴリーとその役割
以下は、ロイヤルカナンが提供する主な療法食のカテゴリーと特徴です。
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腎臓サポート(Renal Support):腎臓への負担を減らすため、たんぱく質とリンの量を調整。高消化性のタンパク質を使用し、食欲低下を防ぐ風味設計も施されています。
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心臓サポート(Cardiac):心臓機能を維持するためにナトリウムを制限し、タウリンやL-カルニチンを配合して心筋の働きを助けます。
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アレルギー対応(Hypoallergenic/Anallergenic):アミノ酸レベルまでタンパク質を分解した加水分解処方で、アレルゲン反応を防止。重度の食物アレルギーや皮膚疾患に対応します。
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体重管理(Satiety/Obesity Management):満腹感を維持しやすい食物繊維を豊富に含み、筋肉を維持しながら脂肪を減らすバランス設計。
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消化器サポート(Gastrointestinal):下痢や嘔吐を起こしやすい犬のために、脂肪含有量を抑え、高消化性の原材料と整腸作用のある食物繊維を使用。
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皮膚サポート(Dermal/Skin Care):皮膚バリアを守るためにオメガ3・6脂肪酸や抗酸化栄養素を配合し、アトピー性皮膚炎などの症状を緩和します。
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糖コントロール(Diabetic):糖尿病の犬向けに、低GI炭水化物を採用し、血糖値の急上昇を抑制。
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肝臓サポート(Hepatic):肝臓に負担をかけない高消化性タンパクと特定脂肪酸を配合し、アンモニア生成を抑えます。
このような多様な製品ラインナップは、単に症状を緩和するだけでなく、「病気の再発防止」や「生活の質の向上」を目指しています。
臨床現場での活用と信頼
ロイヤルカナンの食事療法食は、世界中の動物病院で治療計画の一部として活用されています。
獣医師が薬物治療と併用し、栄養面から回復を支えることで、より早く、より安定した健康改善を実現できます。
多くの獣医師がロイヤルカナンを推奨する理由は、単なる「ブランド力」ではなく、実際に臨床現場で効果が確認されているからです。
飼い主へのサポート体制
ロイヤルカナンは、療法食を正しく使ってもらうために、獣医師と飼い主の双方に向けた教育・情報支援を行っています。
公式サイトや動物病院向け資料では、病気別の栄養管理ガイドや給与のポイント、切り替え方法などを丁寧に解説。
これにより、飼い主が安心して愛犬のケアを続けられる環境を整えています。
トリーツ・リキッド・補助食の展開
療法食の効果を損なわないように設計された専用トリーツ(おやつ)や、病中・術後の犬のための流動食(リキッド製品)も提供されています。
これにより、治療中の犬にもストレスを与えずに栄養を補給できるのが特徴です。
特に、食欲が低下した犬や高齢犬の栄養維持に役立っています。
批判と考え方の違いを理解する
ロイヤルカナンは世界的に高い評価を受けている一方で、飼い主や自然派志向の愛犬家からの批判も少なくありません。
特に、原材料の表記や添加物の使用、そして「自然さ」に対する姿勢をめぐって意見が分かれています。
ここでは、その背景にある思想の違いを整理し、ロイヤルカナンの立場と消費者の価値観の両面から考えてみましょう。
穀物・添加物をめぐる批判
多くの自然派ブランドが「グレインフリー(穀物不使用)」や「無添加」「オーガニック」を掲げる中、ロイヤルカナンでは依然として米、とうもろこし、小麦などの穀物を使用している製品が多く見られます。
これに対し、「犬は肉食動物だから穀物は不要」「穀物はアレルギーの原因になる」といった批判が寄せられることがあります。
しかし、ロイヤルカナンの立場は明確です。
彼らは「犬が雑食に近い消化構造を持つ」という生理学的事実に基づき、加熱処理された穀物が消化可能であり、効率的なエネルギー源になり得ると考えています。
また、穀物を使う理由は“コスト削減”ではなく、“栄養バランスの安定”と“消化吸収の最適化”のためなのです。
さらに、添加物に関しても、ロイヤルカナンは「必要最低限の科学的に安全と証明された成分のみを使用する」という方針を採用しています。
保存料や酸化防止剤はフードの劣化を防ぎ、栄養価を維持するために不可欠な要素とされており、国際基準に従って厳密に管理されています。
科学主義 vs 自然主義という思想の対立
この論争の本質は、単なる「原材料の好み」ではなく、栄養に対する哲学の違いです。
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自然主義(Naturalism):素材そのものの純粋さや自然の恵みを重視する立場。生肉・野菜・果物など、人間の食事に近い自然食を理想とする。
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科学主義(Scientism):栄養素そのものの機能とバランスを重視する立場。どの素材から栄養を得るかよりも、「最終的に体が必要とする栄養をどう供給するか」を重視する。
ロイヤルカナンは後者の科学主義に立脚しています。
犬の健康を最優先に、臨床試験・データ・実験を重ね、どんな犬にも安定した栄養を届けることを目指しています。
これは「自然のまま」ではなく「科学によって最適化された自然」を目指すアプローチなのです。
消費者の声と実際の体験
ロイヤルカナンに対する意見は大きく二分しています。
以下は、代表的な体験談や意見の傾向です。
肯定的な声
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長年皮膚トラブルで悩んでいた犬が、ロイヤルカナンの療法食で改善した。
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下痢や嘔吐が続いたが、消化器サポートシリーズで症状が安定した。
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フードを変えても食欲が落ちないので、継続がしやすい。
否定的な声
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原材料に「ミートミール」「動物性油脂」といった曖昧な表記が多い。
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香りが強すぎる、油っぽいと感じる。
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グレインフリーや国産無添加フードに比べて「自然さ」が感じられない。
こうした意見の違いは、犬の体質や飼い主の価値観によって大きく変わります。
実際、ある犬にとって理想的なフードが、別の犬には合わないということも珍しくありません。
情報の偏りとSNS時代の影響
近年はSNSや口コミサイトの影響で、「人工添加物=悪」「穀物=有害」といった単純化されたイメージが広がっています。
しかし、実際には科学的根拠に基づかない情報も多く、飼い主が不安を感じる原因にもなっています。
ロイヤルカナンはこの点に対して、専門家による情報発信を強化し、正しい栄養知識を広める啓発活動を行っています。
バランスを取った選択のすすめ
結局のところ、「自然派」か「科学派」かという二元論ではなく、犬と飼い主のライフスタイルや健康状態に合った選択をすることが最も重要です。
愛犬が元気で、毛艶や便の状態が安定しているなら、そのフードは“その子にとっての正解”なのです。
他ブランドとの比較とロイヤルカナンの立ち位置
ロイヤルカナンは、世界中のドッグフードブランドの中でも「科学的根拠に基づく栄養設計」を核としたブランドとして際立っています。
一方で、競合ブランドもそれぞれ異なる価値観と哲学を掲げ、飼い主の多様なニーズに応えています。
ここでは、代表的なブランドとの比較を通じて、ロイヤルカナンがどのような立ち位置にあるのかを明確にします。
1. ロイヤルカナンの独自性
ロイヤルカナンの最大の特徴は、「栄養学の精密さと臨床データに基づいた設計」です。
犬の体格・年齢・犬種・健康状態などに応じて細分化されたフード展開は、他ブランドを圧倒しています。
特に獣医師向けの「食事療法食(Veterinary Diet)」分野では、臨床研究の裏付けが豊富で、世界中の動物病院で治療の一環として採用されています。
これは「科学の信頼」というブランドの柱を支える要素であり、同時に消費者が感じる安心感の根拠にもなっています。
2. ヒルズ(Hill’s Science Diet)との比較
ヒルズはロイヤルカナンと最もよく比較されるブランドです。
両者とも獣医療の現場で高いシェアを誇り、「科学的根拠に基づく栄養管理」を掲げています。
しかし、アプローチには微妙な違いがあります。
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ロイヤルカナン:犬種や健康課題ごとに極めて細分化された製品を展開。嗜好性や消化吸収のしやすさを含む「個体最適化」に重点を置く。
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ヒルズ:病態ごとの臨床的データを重視し、「疾患別栄養管理」に特化。製品ラインナップはややシンプルだが、獣医師からの信頼が非常に厚い。
つまり、ヒルズは「病気を治すための食事」、ロイヤルカナンは「健康を最適化する食事」として位置づけるとわかりやすいでしょう。
両者は補完関係に近く、実際に獣医師の多くが症状や犬種に応じて使い分けています。
3. ニュートロ(Nutro)との比較
ニュートロは、ロイヤルカナンとは対極に位置する「自然派ブランド」の代表格です。
原材料にこだわり、第一主原料にチキンやラムの生肉を使用。
人工保存料や香料を一切使わず、自然由来の栄養を重視しています。
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ニュートロの強み:高い嗜好性と素材の透明性。人間が食べても安全なレベルの品質基準(ヒューマングレード)を採用しており、「原材料の見える化」を徹底。
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ロイヤルカナンとの違い:ロイヤルカナンは「科学的処方」で一貫した品質を保証するのに対し、ニュートロは「素材そのものの質」で信頼を得ている。
つまり、ニュートロは“素材主義”、ロイヤルカナンは“栄養主義”という哲学の違いが存在します。
どちらが優れているかではなく、どちらを信じるかという飼い主の価値観に依存します。
4. ウェルネス(Wellness)との比較
ウェルネスは、グレインフリー(穀物不使用)と高タンパク質を特徴とするブランドです。
犬の祖先であるオオカミの食生活を参考に、「本来の肉食動物の栄養バランス」を重視しています。
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ウェルネスの強み:高タンパク・高嗜好性。生肉を主原料とし、穀物を完全に排除。食べる喜びを重視するナチュラル志向の飼い主層に人気。
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ロイヤルカナンとの違い:ロイヤルカナンはグレイン(穀物)を「機能的栄養素」として扱う一方、ウェルネスはそれを「不要物」として排除する。この違いは「科学的最適化」か「自然への回帰」かという根本的な哲学の差を象徴しています。
ウェルネスが“自然の力”を信じるのに対し、ロイヤルカナンは“科学の再現性”を信じる――ここに両ブランドの明確な対立軸があります。
5. うまか(UMAKA)との比較:国産ブランドの台頭
うまかは、日本のプレミアム国産ドッグフードとして急速に人気を高めています。
九州産のブランド鶏「華味鳥」を100%使用し、ヒューマングレード・無添加・国産生産を強みとしています。
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うまかの強み:国産の安心感、食材のトレーサビリティ、素材の鮮度。日本の飼い主が重視する「安全性」「信頼感」「文化的共感」に訴求。
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ロイヤルカナンとの違い:うまかは「人間と同じ基準で作られたごはん」という感情的価値を重視するのに対し、ロイヤルカナンは「犬の体の科学に基づいた栄養設計」という合理的価値を重視している。
つまり、うまかは「情緒的ブランド」、ロイヤルカナンは「理性的ブランド」と言えるでしょう。
特に日本市場においては、両者が異なる消費者層をターゲットにして共存しています。
6. 市場マップにおけるロイヤルカナンの位置
| ブランドカテゴリ | 代表ブランド | 主な価値基準 | 消費者層の特徴 |
|---|---|---|---|
| 科学・臨床重視 | ロイヤルカナン、ヒルズ | 栄養バランス・臨床効果 | 医療・健康志向の飼い主 |
| 自然派・ナチュラル志向 | ニュートロ、ウェルネス | 素材の品質・無添加 | 自然・環境意識が高い層 |
| 国産・ヒューマングレード | うまか、このこのごはん | 安全性・国産信頼感 | 日本的価値観・安心志向 |
この市場構造の中で、ロイヤルカナンは「科学的権威と臨床的エビデンス」を軸に、唯一無二のポジションを確立しています。
つまり、「最もデータに基づいたブランド」であり、感覚的・感情的な判断ではなく、医療的根拠に支えられた選択を提供するブランドなのです。
まとめ:科学を信じるか、自然を信じるか
ここまでの内容を踏まえ、読者が次に取るべき行動を整理しましょう。
愛犬に合ったドッグフードを選ぶ3つのステップ
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愛犬の状態を把握する:年齢・体型・体調・運動量を確認する。
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複数ブランドを比較する:ロイヤルカナンを含むいくつかの製品を調べ、原材料・栄養バランス・価格を見比べる。
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少量から試して観察する:食いつき、便の状態、毛づや、元気さをチェックし、最適なものを見つける。
ロイヤルカナンのドッグフードは、単なる食事ではなく「健康を支える栄養設計」です。
確かに原材料への批判はありますが、その背景には長年の研究と実績があります。
一方で、「自然な素材を大切にしたい」と考える飼い主も増えています。
どちらが正しいというよりも、自分の信念と愛犬の健康状態に合わせた選択をすることが大切です。
最終的に、ドッグフードとロイヤルカナンのどちらを選ぶかは「科学を信じるか」「自然を信じるか」という価値観の違いでもあります。
重要なのは、飼い主が情報を正しく理解し、愛犬に最適な食事を見つけようと努力すること。
その姿勢こそが、真の愛犬家の証なのです。

