はじめに
「いつも喜んで食べていたのに、急にドッグフードを口にしなくなった」――そんな経験はありませんか?
愛犬のごはんの時間が静まり返ると、不安で胸がいっぱいになりますよね。
犬がドッグフードを食べないと、飼い主はとても心配になります。
「わがままかな?」「飽きたのかな?」と思うこともありますが、実際には体の不調やストレスが隠れていることが多いのです。
本記事では、犬がドッグフードを食べないときの原因を体系的に整理し、飼い主が冷静に対応できるようにわかりやすく解説します。
健康を守る第一歩は、「なぜ食べないのか」を理解することです。
まずは様子を観察しよう
犬がドッグフードを食べないとき、飼い主が最初に行うべきことは「観察」です。
焦って違うフードを与えたり、おやつでごまかす前に、まずは冷静に愛犬の状態をチェックしましょう。
観察は、単に“食べたか食べないか”を見るのではなく、犬の体全体や行動の変化を総合的に見ることが大切です。
元気・活動量のチェック
まず見るべきは犬の元気の有無です。
普段のように尻尾を振って飼い主の後をついてくるか、散歩や遊びに興味を示すかを確認します。
遊びたがらず、いつもより動きが鈍い場合は注意が必要です。
犬は体の不調を隠す習性があるため、「少し元気がない」程度でも病気の初期段階であることがあります。
表情や姿勢の観察
犬の顔つきや姿勢は、体調の変化を映す“鏡”のようなものです。
目に生気がない、まばたきが増える、体を丸めて寝ているなどの様子が見られたら、体に痛みや不快感があるサインです。
特に、背中を丸めてお腹を守るようにしている姿勢や、「祈りのポーズ(お尻を上げて前足を伸ばす)」はお腹の痛みを示す代表的な行動です。
食事時の反応
フードを見せたときの反応も重要な判断材料です。
においを嗅ぎに来るが食べない場合、興味はあるものの何かしらの違和感を感じている可能性があります。
逆に、まったく近づかない場合は、嗅覚や気分の変化、または痛みや吐き気によって「食べ物を避けている」ことが考えられます。
食べようとして口を近づけた後に顔を背けたり、口を開けかけてやめる行動は、口内の痛みが原因のこともあります。
消化器の状態の確認
食べないだけでなく、嘔吐や下痢、便秘などがあるかも観察しましょう。
これらの症状があるときは消化器のトラブルの可能性が高くなります。
吐いた場合は、その内容(未消化のフード、黄色い液体、血が混ざっていないかなど)を記録しておくと、獣医師が診断しやすくなります。
便の色や形も重要な情報です。
黒っぽい便は胃や腸からの出血を、白っぽい便は肝臓や膵臓の異常を示す場合があります。
水分摂取と脱水チェック
食べないときに水を飲むかどうかは、健康状態を見極める大切なポイントです。
水を全く飲まない場合、脱水が進みやすく、命に関わることもあります。
家庭で簡単にできる脱水チェック法として、「皮膚を軽くつまんで戻る速さを見る」「歯ぐきを触って湿り気を確認する」という方法があります。
皮膚がすぐに戻らなかったり、歯ぐきが乾いていたら脱水の可能性があります。
体温・呼吸・脈拍の観察
食欲不振の背景に発熱や呼吸の異常があることもあります。
犬の平熱はおおよそ38〜39℃です。
体温が高い、または低すぎる場合は、感染症や内臓疾患のサインです。
また、呼吸が浅い・早い・苦しそうな場合もすぐに受診が必要です。
脈が速くなる、震えるなどの症状も見逃してはいけません。
環境とストレスの要因
環境の変化も観察の一部です。
新しい家族が増えた、引っ越した、飼い主が忙しくなったなど、生活の変化がないかを思い返してみましょう。
犬は人間よりも環境変化に敏感で、安心感がなくなると食欲が一気に低下します。
ストレス性の食欲不振は、体調の悪化よりも徐々に回復しますが、飼い主が落ち着いた態度で接することが大切です。
記録をとることの重要性
観察の結果はできるだけ詳細にメモしておきましょう。
「いつから食べないのか」「どんなフードを食べていたのか」「行動や便の変化」「飲水量」などを時系列で記録すると、獣医師にとって非常に貴重な診断情報になります。
スマートフォンで動画を撮るのも有効です。
目で見た行動をそのまま伝えることができるからです。
病気が原因で食べないこともある
犬がドッグフードを食べない理由で、最も注意しなければならないのが病気によるものです。
病気による食欲不振は「一時的な気分」ではなく、体がSOSを発しているサインです。
ここでは主な原因を体系的に説明し、どのような行動や症状に注意すべきかを詳しく紹介します。
口や歯の病気
口腔内の異常は犬の食欲低下の中でも非常に多い原因です。
歯周病や口内炎、歯の欠け、歯石の蓄積などが考えられます。
主な症状
- フードを口に入れてもすぐに落とす
- 片方の歯でしか噛まない
- 口を触られるのを嫌がる
- 口臭が強くなる、よだれが増える
- 硬いフードを避け、柔らかいものなら食べる
こうした症状がある場合、痛みや炎症が原因のことが多く、自然に治ることはほとんどありません。
早期に歯科検診を受け、スケーリングや抗生物質の治療が必要な場合もあります。
特に小型犬は歯石がつきやすいため、3歳を過ぎたら定期的な口腔ケアを行いましょう。
消化器の病気
胃や腸に関わる疾患も、食欲不振の大きな要因です。
最も一般的なのは胃腸炎や膵炎、胃潰瘍、腸閉塞などです。
胃腸炎
ウイルス感染や腐敗した食べ物の摂取によって起こります。
嘔吐、下痢、腹部の張りなどを伴うことが多いです。
膵炎
膵臓の炎症によって消化酵素が過剰に分泌され、自身の臓器を傷つけてしまう状態です。
非常に痛みが強く、「祈りのポーズ」と呼ばれる独特の姿勢をとるのが特徴です。
重症の場合は嘔吐や下痢、発熱、脱水を伴い、早急な治療が必要です。
腸閉塞(異物誤飲)
おもちゃや布などを飲み込んでしまうと、消化管が詰まり、吐き気と激しい腹痛を引き起こします。
完全に詰まると生命の危険があるため、緊急手術が必要です。
内臓の病気
腎臓、肝臓、心臓、膵臓などの内臓疾患も、食欲の低下を引き起こします。
腎臓病
腎臓がうまく機能しなくなると、体に老廃物(尿毒素)が溜まり、強い吐き気や倦怠感が現れます。
初期段階では多飲多尿(水をたくさん飲み、尿の量が増える)が見られます。
進行すると水も飲めなくなり、脱水が進む危険があります。
肝臓病
肝臓は「体の解毒工場」とも呼ばれる臓器です。
肝機能が低下すると毒素を処理できず、元気がなくなり、黄疸(白目や歯ぐきが黄色くなる)や吐き気を伴うことがあります。
脂っこい食事や薬剤の影響でも悪化するため、フード選びには注意が必要です。
心臓病
循環不全により体に酸素が行き渡らなくなると、疲れやすくなり、活動量が減少します。
息が荒く、食事中に疲れて食べられないというケースもあります。
ホルモン・代謝の病気
ホルモンバランスが崩れることで、食欲が変化することもあります。
甲状腺機能低下症
代謝が落ちて元気がなくなり、食欲が減ることがあります。
体重増加、毛のツヤの低下なども併発します。
アジソン病(副腎皮質機能低下症)
ストレスや感染症などをきっかけに副腎ホルモンが不足し、食欲不振、嘔吐、下痢、脱力などを起こします。
発作的に症状が悪化することもあるため、早期の血液検査が重要です。
感染症や中毒
感染症(犬パルボウイルス、犬ジステンパーなど)は高熱とともに急激な食欲低下を起こします。
さらに、家庭にある観葉植物、チョコレート、キシリトールなどの中毒物質も命に関わる危険があります。
誤食が疑われる場合は、すぐに動物病院へ連絡しましょう。
命に関わる疾患のサイン
- 食べない+水も飲まない
- 激しい嘔吐や下痢が続く
- ぐったりして動かない
- 呼吸が速い、浅い、苦しそう
- 体が冷たい、震える
これらの症状は緊急を要します。
すぐに動物病院を受診してください。
ストレスや環境の変化が原因のこともある
犬も人間と同じように、ストレスや環境の変化によって食欲が落ちることがあります。
身体に異常がなくても、心の状態が不安定になるだけで食欲が減ることがあるのです。
犬は言葉を話せないため、ストレスは「行動の変化」として表れます。
食べないという行動は、その中でも特に分かりやすいサインです。
犬がストレスを感じる主な状況
ストレスの原因は、家庭環境や日常の中に潜んでいます。
犬は習慣を大切にする動物で、環境の小さな変化でも敏感に反応します。
環境の変化
- 引っ越し、部屋の模様替え、家具の配置変更
- 季節の変わり目による気温や湿度の変化
- 外の工事音や花火、雷などの大きな音
社会的な変化
- 新しい家族(赤ちゃんや別のペット)が増える
- 家族の誰かがいなくなる、または留守が増える
- 飼い主の生活リズムの変化(夜勤、旅行、帰宅時間の変更)
日常の刺激不足
- 運動量の減少、散歩不足
- 遊びやコミュニケーションの時間が減る
犬は社会的な動物です。
飼い主との時間や安心できる空間が失われると、強いストレスを感じるようになります。
ストレスによる行動のサイン
犬がストレスを感じているとき、食べない以外にも次のような行動が見られることがあります。
- よくあくびをする、体を頻繁に舐める
- 尻尾を下げる、耳を後ろに倒す
- 部屋の隅に隠れる、震える
- 急に吠えるようになる、または静かになりすぎる
- 便が柔らかくなる、またはトイレの失敗が増える
これらの行動は、体の病気ではなく「心の不調」を表している可能性があります。
ストレスを減らすための基本的な対処法
まずは犬の生活リズムを安定させることが大切です。
毎日の食事、散歩、睡眠の時間をできるだけ一定に保ちましょう。
日常の予測がつくことで、犬は安心感を取り戻します。
環境面での工夫
- 犬専用の落ち着けるスペース(クレート、ベッドなど)を用意する
- 大きな音や騒がしい場所を避ける
- お気に入りの毛布や飼い主の匂いがついたタオルを置いてあげる
- 照明を落とし、穏やかな空気をつくる
コミュニケーション面での工夫
- 優しく声をかけ、焦らずゆっくり接する
- スキンシップの時間を増やす(撫でる、話しかける)
- 安心できる言葉や声のトーンを使う
犬は飼い主の感情に非常に敏感です。
飼い主が焦ったり不安そうにしていると、犬も「何か悪いことが起きている」と感じてしまいます。
まずは飼い主が落ち着いた態度を保つことが大切です。
学習による“わがまま食べ”の悪循環
食べない犬を心配して、飼い主がついおやつや人間の食べ物を与えてしまうケースがあります。
これが続くと、犬は「ドッグフードを食べなければもっと美味しいものがもらえる」と学習してしまいます。
このような行動は、しつけの観点からも避けるべきです。
改善のポイント
- 決まった時間にフードを出し、10〜15分経っても食べなければ片付ける
- 間食やおやつを控える
- 一貫したルールを家族全員で守る
- 再びフードを出すときは冷静に(“お願い”の雰囲気を出さない)
このルールを2〜3日続けることで、多くの犬は再びドッグフードを食べ始めます。
健康な犬が「わざと食べない」ことはあっても、自分を飢えさせることはほとんどありません。
精神的なサポートと回復へのアプローチ
ストレスが強い犬には、次のような方法も役立ちます。
- 短い散歩を1日数回に分ける
- 軽い運動や知育おもちゃで気を紛らわせる
- 落ち着く香り(ラベンダーなど)を利用する
- 獣医師や動物行動学の専門家に相談する
軽度のストレスであれば、環境を整えるだけで食欲が戻ることもあります。
しかし、数日経っても改善しない場合や、同時に下痢・震え・攻撃性などの変化が見られる場合は、医療的なサポートが必要です。
食べないときに試せる工夫と注意点
犬がドッグフードを食べないときは、いきなり新しいフードに変えるよりも、まず「今のフードと環境を見直す」ことが大切です。
食べない原因が嗜好性(味やにおい)だけでなく、保存状態や温度、与え方、場所などに関係していることも多いため、1つずつ丁寧に確認しましょう。
フードの鮮度と保管方法の見直し
ドッグフードは開封後、時間が経つと酸化が進み、風味が落ちるだけでなく栄養価も低下します。
特に無添加フードは防腐剤を使わないため、開封後1か月以内に使い切るのが理想です。
保存のコツ
- 開封後は密閉容器に移す(空気や湿気を遮断する)
- 直射日光や高温多湿を避け、冷暗所で保管する
- 夏場は冷蔵庫の野菜室に入れると酸化を防げる
- 1回分ずつ小分けしておくと衛生的
フードの袋を直接開けたままにしていると、湿気や虫の侵入でにおいが変わることもあります。
犬は嗅覚が非常に敏感なため、少しでも「違う」と感じると食べなくなることがあります。
香りを引き立てて食欲を刺激する方法
嗅覚を刺激することで、犬の食欲を戻すことができます。
香りの強い食材や調理法を活用しましょう。
温める
ドライフードやウェットフードを人肌程度(約40℃)に温めると、香りが立ち食欲をそそります。
電子レンジを使う場合は数秒程度で十分です。
加熱しすぎると香りが飛び、逆効果になることもあるので注意しましょう。
水分を加える
ぬるま湯や無塩のチキンスープ、ボーンブロス(骨スープ)を少量加えると香りと風味が増します。
胃腸が弱い犬やシニア犬にも消化しやすい方法です。
スープを使う場合は塩分が入っていないものを選びましょう。
トッピングを使うときの工夫
トッピングは嗜好性を上げるのに有効ですが、バランスを崩さないよう注意が必要です。
肉や魚などを混ぜるときは、総量の10〜20%以内に抑えるのが理想です。
おすすめのトッピング例
- 茹でたささみや白身魚(脂肪分が少なく消化が良い)
- 温めたウェットフード
- すりおろした野菜(にんじん、かぼちゃなど)
- 無糖ヨーグルトやカッテージチーズ(腸内環境を整える)
トッピングは「食欲を引き出す助け」として活用しましょう。
トッピングだけを選んで食べるようであれば、一度中止して再調整が必要です。
全体をよく混ぜ込み、フード全体に味と香りをなじませるのがコツです。
食器と食事環境の改善
犬が安心して食べられる環境を整えることも、食欲回復に欠かせません。
環境のストレスが減るだけで、食べる意欲が戻ることがあります。
環境づくりのポイント
- 静かで落ち着いた場所で食事を与える
- 人の出入りが多い場所やテレビの近くは避ける
- 床が滑る場所にはマットを敷く
- 食器の高さを調整できるスタンドを使う(特に中〜大型犬や高齢犬に有効)
食器選びのポイント
- 金属音が苦手な犬には、陶器やプラスチック製を使う
- 底が広く安定感のある食器を選ぶ
- 毎回洗って清潔に保つ(残った油分の酸化臭は犬が嫌がります)
食欲を取り戻すための習慣づくり
食べないからといって心配して多くの選択肢を与えると、犬は混乱してしまいます。
習慣的なルールを守ることで、「今が食事の時間」と理解させることができます。
習慣化のポイント
- 毎日同じ時間に与える
- 10〜15分で食べなければ静かに片付ける
- 間食やおやつは控えめにする
- 飼い主はプレッシャーをかけない(静かに見守る)
一貫した対応が、犬に安心感を与えます。
「食べない=心配される」状況を作らないようにすることが、食習慣の回復につながります。
フードの種類や形状を見直す
犬によっては、粒の大きさや硬さが合っていないことが原因で食べない場合もあります。
見直しのヒント
- 小型犬には小粒タイプ、中〜大型犬には中粒・大粒タイプを選ぶ
- 噛む力が弱い犬には、柔らかいセミモイストタイプやふやかしたドライフードを
- 嗜好性の高いフード(ラム、サーモン、チキンなど)を試してみる
ただし、フードを頻繁に変えるのは逆効果です。
7〜10日かけて少しずつ混ぜながら切り替えるのが安全です。
注意すべきNG行動
- 人間の食べ物を与える(塩分・脂肪が多く健康を害する)
- 香りの強い調味料を使う(胃腸に負担)
- 食べないたびにフードを変える(偏食を助長)
- 過剰に心配して呼びかける(犬にプレッシャーを与える)
年齢によって原因が違う
犬がドッグフードを食べない理由は、その年齢やライフステージによって大きく異なります。
子犬、成犬、シニア犬では体の仕組みや栄養の必要量、味覚や嗅覚の感度も変化するため、同じ「食べない」という行動でも意味が異なります。
それぞれの段階で起こりやすい原因と対処法を理解しておくことで、早めに対応し、健康を守ることができます。
子犬の場合
子犬(生後2か月〜12か月頃)は成長スピードが早く、代謝も非常に活発です。
そのため、わずかに食事を抜くだけでも体に影響が出ることがあります。
よくある原因
- 成長のピークが終わり、自然に食欲が落ちる(4〜5か月頃)
- 環境の変化(新しい家、トイレトレーニング、ワクチン接種など)
- 歯の生え変わりによる痛み(特に生後4〜6か月)
- フードの粒が大きすぎて噛みづらい
- 食事のタイミングや回数が合っていない
対処のポイント
- 生後6か月までは1日3〜4回に分けて与える
- やわらかくふやかしたフードを使う(40℃程度のお湯で5分)
- 新しい環境に慣れるまでは、静かで安心できる場所で食事を与える
- 歯が抜け替わる時期は、硬いフードを避けて柔らかいものに切り替える
注意点
子犬は体内の糖を蓄える力が弱いため、12〜24時間以上食べないと低血糖を起こすおそれがあります。
ふらつき、震え、意識がぼんやりするなどの症状が見られたら、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
成犬の場合
成犬(1歳〜7歳)は体のバランスが安定し、通常は安定した食欲を保ちます。
しかし、運動量やホルモンバランス、環境の変化によって一時的に食欲が低下することがあります。
よくある原因
- 運動不足による消費カロリーの減少
- 避妊・去勢後のホルモン変化(食欲増進や減退)
- ストレスや生活リズムの変化
- 嗜好性の低いフード(飽きや風味の劣化)
対処のポイント
- 散歩や運動の時間を増やし、エネルギー消費を促す
- 体重と体型を定期的にチェックし、フード量を調整する
- フードを温めて香りを強めるなど、嗜好性を上げる工夫をする
- 定期的に健康診断を受け、内臓疾患の早期発見に努める
成犬の食欲不振は、ストレスや環境よりも「健康の変化」が関係していることも多いです。
1〜2日様子を見ても改善しない場合は、病気の可能性を考えて獣医師に相談しましょう。
シニア犬(高齢犬)の場合
7歳を過ぎた頃から、犬の代謝や感覚機能が徐々に衰え始めます。
食べない原因が単なるわがままではなく、生理的な変化や病気によるもののことも多くなります。
よくある原因
- 嗅覚・味覚の低下で食べ物の香りを感じにくくなる
- 歯周病、口内炎、歯のぐらつきなどで噛むのが痛い
- 筋力や関節の衰えにより、食べる姿勢がつらい
- 内臓機能(腎臓・肝臓)の低下による食欲不振
- 消化能力の低下でフードが合わなくなる
対処のポイント
- フードを人肌程度に温めて香りを強める
- ウェットタイプやふやかしたフードで噛みやすくする
- 食器の高さを調整し、体に負担をかけない姿勢にする
- 消化吸収の良い「シニア犬用フード」を選ぶ(高たんぱく・低脂肪・低リン)
- 食欲増進効果のあるハーブやサプリメント(獣医師の指導のもとで)を利用する
注意点
シニア犬は体の不調を隠す傾向があります。
「食べない」「元気がない」といった小さな変化を見逃さないようにしましょう。
2食以上連続して食べない場合は、すぐに受診することをおすすめします。
年齢別フード選びのポイントまとめ
| ライフステージ | 特徴 | フードのポイント |
|---|---|---|
| 子犬 | 成長が早く、消費エネルギーが多い | 高たんぱく・高エネルギー・カルシウム強化 |
| 成犬 | 体重と筋肉量の維持が重要 | 栄養バランス重視・活動量に合わせたカロリー |
| シニア犬 | 消化力・嗅覚・筋力が低下 | 消化しやすく香りが強い・低脂肪・低リン |
すぐに獣医師に相談すべきサイン
犬がドッグフードを食べないとき、「少し様子を見よう」と思う飼い主は多いですが、実際には“待つこと”が命に関わるリスクになる場合があります。
特に、食欲不振が他の症状と同時に現れたときは、すぐに動物病院での診察が必要です。
ここでは、緊急性の高いサインと受診時の準備について詳しく解説します。
すぐに受診が必要な危険サイン
以下の症状が1つでも当てはまる場合は、迷わず動物病院に連絡してください。
食事関連のサイン
- 2日以上まったく食べない(成犬の場合)
- 子犬や高齢犬が12〜24時間以上食べない
- 食べようとしても吐いてしまう、または飲み込めない
- おやつも拒否する
水分関連のサイン
- 水を飲まない(12〜24時間続く場合は脱水の危険)
- 飲んでもすぐ吐く、または異常に多く飲む
- 尿の量が極端に減る、または出ていない
行動や体の変化
- ぐったりして動かない、反応が鈍い
- 震え、ふらつき、立ち上がれない
- 呼吸が荒い、ゼーゼーと息苦しそうにする
- 体温が異常に高い、または冷たい
- 突然の体重減少、毛並みの急な変化
消化器や排泄の異常
- 嘔吐が続く(特に泡や血が混じる場合)
- 下痢が続く、または黒色便(消化管出血の疑い)
- 腹部の膨らみや硬さ(膨張や閉塞の可能性)
これらの症状は、消化器疾患、腎不全、子宮蓄膿症、膵炎、感染症、中毒など、命に関わる病気の可能性を示しています。
特に「食べない+水を飲まない」状態は緊急度が非常に高いと判断できます。
受診前に確認しておくこと
動物病院での診察をスムーズに進めるために、次の情報を整理して伝えられるようにしましょう。
- 食欲不振が始まった時期と経過(日数、急か緩か)
- 嘔吐や下痢の有無とその回数、内容(色、粘り、血の有無)
- 水の摂取量、排尿や排便の頻度と状態
- 元気、体温、行動の変化(普段との違い)
- 最近変えたフードやおやつ、服薬、シャンプーなど
- 誤食の可能性(おもちゃ、骨、植物など)
これらの情報をメモにまとめて持参すると、診断の精度が高まり、治療方針を早く決める助けになります。
特に「吐いたもの」「下痢便」は、可能であれば写真や実物を持参すると効果的です。
夜間・休日に症状が出た場合
症状が深夜や休日に出た場合でも、「朝まで様子を見る」のは危険です。
次のような場合は、夜間救急の動物病院に連絡してください。
- 数時間以内に急激に悪化している
- 息が荒い、ぐったりして立てない
- けいれん、失神、泡を吐く
- 血の混じった嘔吐や下痢
- 痛みで鳴き続ける、触ると怒る
最近は「夜間・救急動物病院」や「獣医師オンライン相談サービス」も増えており、地域の緊急連絡先を事前に調べておくと安心です。
早期受診が命を救う理由
犬は人間のように言葉で痛みや不調を伝えることができません。
飼い主が「まだ大丈夫」と思っているうちに、病状が進行していることが多いのです。
特に膵炎や腎不全、子宮蓄膿症などは、数時間〜1日で命に関わることもあります。
早期受診によって、点滴や内服治療だけで回復できるケースも少なくありません。
受診後に注意すべきポイント
診察後も、医師の指示を守って経過観察を続けましょう。
- 指示された薬の量や回数を守る
- フードやおやつを勝手に変えない
- 体調が戻っても急に普段の量に戻さない
- 再発防止のため、フードや生活環境を見直す
食べないという行動の裏には、必ず何らかの理由があります。
命に関わるサインを見逃さず、迷ったら「受診する」ことを基本にしましょう。
早めの対応が、愛犬の命を救う最善の方法です。
実践チェックリスト
- 元気や水分摂取の有無を確認する
- 2日以上食べない、または他の症状があるときは受診する
- ストレスや環境の変化がないか見直す
- フードの鮮度・温度・においを確認する
- 決まった時間に食事を出し、ルールを守る
まとめ
犬がドッグフードを食べないのには必ず理由があります。
それは病気のサインかもしれませんし、ストレスや環境の変化、または学習による行動かもしれません。
大切なのは焦らず観察し、冷静に判断することです。
「たぶん大丈夫」と放置せず、少しでも異変を感じたら獣医師に相談しましょう。
毎日の観察と早めの対応が、愛犬の健康と命を守ります。
食べることは健康のバロメーター。
飼い主のやさしさと注意深さが、犬の元気な毎日を支えます。

