はじめに
犬の健康は毎日の食事から作られます。
どんなに運動をしても、バランスの悪い食事では病気や肥満になりやすくなります。
逆に、適切なドッグフードを選ぶことで寿命が延びたり、生活の質が良くなったりします。
だからこそ、飼い主がドッグフードについて正しい知識を持つことがとても大切です。
ドッグフードの種類を知ろう
犬のごはんにはさまざまな種類がありますが、大きく分けると ドライフード、ウェットフード、セミモイストフード の3つに分類できます。
ここではそれぞれのメリット・デメリット、どんな犬に適しているのかをさらに詳しく解説します。
ドライフード
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特徴: 水分が少なく硬い粒状で、保存性に優れています。価格も比較的安く、コストパフォーマンスが高いのが魅力です。
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メリット: 長期間保存でき、まとめ買いに向いています。粒を噛むことで歯垢を削り、口腔内の健康維持にも役立ちます。
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デメリット: 嗜好性がやや低く、偏食の犬や食欲のない犬には食べにくい場合があります。また、水分が少ないため飲水量が少ない犬では水分不足になることもあります。
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適している犬: 健康な成犬や日常的にしっかり水を飲む犬に最適です。
ウェットフード
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特徴: 水分が75~80%と豊富で、缶やパウチに入って販売されることが多いです。
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メリット: 香りや味が良いため食欲を刺激します。噛む力が弱い子犬やシニア犬でも食べやすいです。また、水分補給を兼ねられるのも利点です。
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デメリット: 栄養密度が低く、同じカロリーを摂るには量が必要です。そのため費用がかかりやすく、開封後は保存期間が短いという弱点もあります。
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適している犬: 偏食気味の犬、シニア犬、病気や手術後で食欲が落ちている犬に向いています。
セミモイストフード
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特徴: 水分量が30%前後で柔らかい食感が特徴です。小袋やトレー入りの商品が多く、手軽に与えられます。
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メリット: 香りが強く嗜好性が高いため、犬が好んで食べやすいです。ドライとウェットの中間で使いやすいと感じる飼い主も多いです。
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デメリット: 保存が難しく、防腐剤や保存料が多く使われていることがあります。毎日の主食には不向きな場合もあるので注意が必要です。
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適している犬: 特別なおやつ感覚で与えたい時や、ドライフードに飽きた犬へのアクセントとして適しています。
総合栄養食を選ぶことが大切
ドッグフードを買うときに最も重要なのは、その商品に 「総合栄養食」 と書かれているかどうかを確認することです。
総合栄養食とは、そのフードと水だけで犬が健康に生活するために必要な栄養をすべてまかなえるように設計されたものを指します。
これは人間で言えば、主食や副菜を含めたバランスの良い定食のようなもので、これさえ食べていれば栄養が偏らないという保証があるのです。
総合栄養食とその他のフードの違い
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総合栄養食: 主食として与えることを前提に作られ、犬のライフステージ(子犬・成犬・高齢犬など)ごとに必要な栄養バランスが整えられています。
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間食(おやつ): 嗜好性を高めることが目的で、栄養のバランスは考慮されていません。ごほうびやトレーニングの補助に適しています。
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一般食(副食): 総合栄養食と一緒に与えることを前提に作られています。香りや食感で犬の食欲を刺激する役割が強いです。
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療法食: 特定の病気や症状に対応するために、栄養素が特別に調整されています。獣医師の指導のもとでのみ使用されます。
ライフステージごとの総合栄養食
総合栄養食はさらに犬の年齢や状態に合わせて種類が分かれています。
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子犬用(パピー): 成長に必要なエネルギーやカルシウム、タンパク質が豊富に含まれています。
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成犬用(アダルト): 栄養過多を防ぎ、体重を維持するためにバランスが取られています。
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高齢犬用(シニア): 低カロリーで消化しやすく、関節や心臓をサポートする成分が追加されています。
総合栄養食を選ぶときの注意点
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表示を必ず確認: パッケージに「総合栄養食」と明記されていないものは、主食にできません。
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AAFCOやFEDIAFの基準: 海外ブランドでは、米国AAFCOや欧州FEDIAFの栄養基準を満たしているかどうかが信頼性の指標となります。
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国産フードの基準: 日本でもペットフード安全法に基づき、必要な表示が義務付けられています。成分表や原材料を細かく確認しましょう。
おやつや副食の位置づけ
おやつや副食は犬とのコミュニケーションやしつけに役立ちますが、与えすぎると栄養バランスが崩れます。
総合栄養食をしっかり与えたうえで、1日の必要カロリーの10%以内を目安におやつを活用するのが理想的です。
年齢に合わせたフードの選び方
犬も人間と同じで、年齢によって必要な栄養が大きく変わります。
ライフステージに合ったフードを選ぶことは、健康維持と長寿につながる大切なポイントです。
子犬(パピー期)
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特徴: 生後1年(大型犬は18~24か月)までの時期は、骨や筋肉、内臓、免疫が急速に発達する重要な成長期です。
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必要な栄養: 成犬の約2倍のエネルギー、質の高いたんぱく質、カルシウムやリンなどのミネラルが必要です。
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ポイント: 消化吸収が良いフードを選び、1日の食事を3~4回に分けて与えるのが理想です。急激な成長を支えるため、総合栄養食の「子犬用」を必ず選びましょう。
成犬(アダルト期)
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特徴: 成長が止まり、体を維持する時期に入ります。1~7歳(犬種やサイズによって異なる)が一般的に成犬期とされます。
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必要な栄養: 栄養の過不足を避けることが大切です。高カロリーすぎると肥満になり、少なすぎると筋肉量や体力が落ちます。
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ポイント: 活動量や犬種に合わせたフードを選びましょう。運動量の多い犬は高エネルギー配合のものを、室内で過ごすことが多い犬は低カロリー配合のものを選ぶとよいです。
高齢犬(シニア期)
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特徴: 7歳を過ぎるとシニア期に入る犬が多いです。代謝や活動量が落ち、体の機能も少しずつ衰えてきます。
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必要な栄養: カロリーを抑えつつ、関節の健康を助けるグルコサミンやコンドロイチン、心臓や脳を守る抗酸化成分(ビタミンEなど)が重要です。
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ポイント: 歯や口腔の状態も影響するため、硬いフードが食べにくければウェットフードやふやかしたドライフードを取り入れると良いでしょう。食欲が落ちやすいため、香りや味を工夫した嗜好性の高いフードを選ぶことも大切です。
ラベルを読むコツ
ドッグフードを選ぶときには、パッケージに書かれている情報を正しく読み取ることがとても大切です。
表面に書かれているキャッチコピーだけで判断せず、裏面にある「原材料」と「成分表示」をしっかり確認しましょう。
原材料表示のポイント
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具体的な表記を重視: 「肉類」より「鶏肉」「牛肉」など具体的に書かれている方が信頼性があります。総称的な表記は品質が一定でない可能性があります。
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水分の落とし穴: 原材料は重量順で書かれています。生肉は水分が多いため、順位が高くても実際に含まれる栄養の割合は低いことがあります。一方で「チキンミール」など乾燥肉は濃縮されているため、順位が低くても栄養価が高い場合があります。
成分表示(保証成分値)の見方
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粗たんぱく質・粗脂肪: 犬の健康に欠かせない栄養素です。「〇%以上」と最低保証値で表示されることが多いです。
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粗繊維・粗灰分: 消化に関わる指標で、「〇%以下」と最大値で記載されます。数値が高すぎる場合は消化吸収に不利です。
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水分: ドライフードはおよそ10%、ウェットフードは70〜80%と大きく異なるため、比較する際は「乾物量ベース(DMB)」で換算することが重要です。
避けたい添加物の例
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BHAやBHTなどの合成酸化防止剤: 長期的に摂取すると体に悪影響を与える可能性があります。
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着色料: 犬は色で食欲を判断しないため不要で、健康へのリスクがあることもあります。
推奨される添加物の例
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ビタミンEやC、ローズマリー抽出物: 天然由来の酸化防止剤で、安全性が高く栄養的な価値もあります。
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必須ビタミン・ミネラル: 総合栄養食にするために追加される栄養素で、健康維持に必要不可欠です。
ラベル確認の実践ポイント
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「総合栄養食」と明記されているか確認する
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主原料が動物性たんぱく質であるかをチェックする
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添加物は必要最低限で安全性が高いものを選ぶ
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不自然に多くの甘味料や香料が使われていないかを見る
流行のフードに注意
近年のペットフード市場では、人間の健康志向やライフスタイルの変化を反映して「グレインフリー」「オーガニック」「ヒューマングレード」といった言葉が注目を集めています。
これらの表記は一見すると安心感を与えますが、必ずしもすべての犬にとって必要・有益というわけではありません。
ここでは、それぞれの特徴と注意点を整理します。
グレインフリー(穀物不使用)
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メリット: 小麦やトウモロコシ、大豆などにアレルギーがある犬には有効です。また、肉や豆類を主原料にすることで高たんぱく質な配合になりやすい特徴があります。
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注意点: 穀物にアレルギーがない犬にとっては特別なメリットは少なく、炭水化物源として使われるジャガイモや豆類の過剰摂取が健康に影響する可能性もあります。特に一部研究では、豆類を多用したグレインフリー食と拡張型心筋症の関連が指摘されており、長期的な安全性には議論が続いています。
オーガニック
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メリット: 原材料が農薬や化学肥料を使わず栽培されており、残留化学物質のリスクを避けられる点で安心感があります。また、環境に配慮した生産方法を支持することにもつながります。
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注意点: 値段が高くなりやすく、保存性に劣る場合があります。さらに、日本ではペットフードに対して「有機JAS」マークをつけられないため、実際には原材料の一部がオーガニック認証を受けているだけのケースもあります。パッケージの表示を鵜呑みにせず、どの程度オーガニック原料が使われているのかを確認することが大切です。
ヒューマングレード
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メリット: 人間が食べられるレベルの原材料を使用しているとされ、品質の高さをアピールする言葉です。
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注意点: 「ヒューマングレード」という表記には法律上の定義がなく、メーカーの自主的な表示に過ぎない場合があります。本当に人間用の基準で製造されているかどうかは製品によって差が大きく、必ずしも表示通りの品質が保証されているわけではありません。
まとめ
ドッグフードに「絶対に正しい答え」はありません。
大事なのは犬の年齢や体質、体調に合わせて最適なものを選ぶことです。
基本のポイントは「総合栄養食を選ぶこと」「ライフステージに合わせること」「ラベルをよく読むこと」「流行に流されないこと」です。
飼い主がしっかり情報を見極めて選ぶことで、犬は健康に長生きできます。
実際の行動の例
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定期的にフードを見直し、愛犬の体調に合っているか確認する
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年に1回は獣医に相談し、食事内容を点検してもらう
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体調の変化やアレルギーが疑われる場合は、自己判断せず獣医師に相談する
飼い主の小さな工夫と注意が、愛犬の一生を大きく左右するのです。

