犬の健康寿命をのばすための完全ダイエットとドッグフード徹底解説ガイド

犬が少し太っている姿を「かわいい」と思う飼い主は多いですが、医学的には犬の肥満は病気とされています。

肥満は心臓や関節に負担をかけ、糖尿病や呼吸の病気のリスクを高めます。

放置すると寿命が短くなる可能性もあるのです。

愛犬を元気に長生きさせるためには、正しいダイエットとドッグフードの選び方が欠かせません。

本ガイドでは、犬が太る理由、肥満によるリスク、適切な食事や運動、日常でできる工夫をわかりやすく解説します。

犬が太る理由を理解しよう
1. 生活習慣の原因
2. 病気の原因
肥満が引き起こすトラブル
犬の体型をチェックする方法
ダイエットに向いているドッグフード
どのくらいの量を与えればいいのか
運動の取り入れ方
ダイエット中の工夫と注意点
まとめ

犬が太る理由を理解しよう

犬が太る原因は大きく分けて「生活習慣」と「病気」の2つに分類されます。

どちらの要因も見逃すと、健康への影響が長期的に積み重なり、深刻な病気につながる可能性があります。

そのため、原因を正しく理解することがダイエットの第一歩となります。

生活習慣の原因

おやつや人間の食べ物の与えすぎ
犬は小型犬でも体重が数キロ程度しかないため、人間が「少しだけ」と思って与える食べ物でも大きなカロリーオーバーになります。特に脂肪分や糖分を多く含む食材は、少量でも肥満を引き起こしやすいです。
避妊や去勢後の代謝低下
ホルモンバランスの変化によって基礎代謝が落ちるため、同じ量の食事を与えていても太りやすくなります。手術後は給与量を10〜20％減らすなど、早めに対応することが大切です。
加齢による活動量の低下
年齢を重ねると散歩や遊びの時間が自然と減り、消費カロリーも落ちます。さらに筋肉量が減少することで代謝も低下し、体重増加につながります。高齢犬では特に「食事量は変わらないのに太ってきた」というケースが多く見られます。
運動不足
室内飼育が一般的になったことで、日常的に動く機会が少なくなっています。特に散歩時間が短い犬や、遊びの習慣が少ない犬は、余分なエネルギーが消費されず脂肪として蓄積されやすい傾向にあります。

病気の原因

生活習慣に問題がなくても、病気によって体重が増えてしまう場合があります。

この場合は単なるダイエットでは改善せず、獣医師の診断と治療が必要です。

クッシング症候群（副腎皮質機能亢進症）
副腎から分泌されるホルモンが過剰になることで、お腹が張る・毛が抜ける・水を多く飲むなどの症状が出ます。食欲が旺盛になり、結果的に太ることが多い病気です。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンが不足することで代謝が落ち、食欲が低下しているにもかかわらず体重が増える特徴があります。左右対称の脱毛や無気力な様子も見られるため、肥満との区別が重要です。
その他の疾患
心臓病や腎臓病などの基礎疾患でも、運動量が落ちて体重が増える場合があります。また、関節の痛みによって動くのを嫌がることが原因となるケースもあります。

肥満が引き起こすトラブル

犬の肥満は見た目の問題にとどまらず、健康全体に深刻な悪影響を与えます。

余分な体脂肪が積み重なることで、体のさまざまな器官や組織に負担がかかり、寿命を縮める要因となります。

関節や骨への影響

体重が増えると四肢や背骨への負担が大きくなり、関節炎や椎間板ヘルニアを悪化させる可能性があります。
小型犬では膝蓋骨脱臼、大型犬では股関節形成不全のリスクが高まりやすいです。
痛みのために動くことを嫌がり、さらに運動不足と体重増加を招く悪循環が起こります。

代謝性疾患のリスク

糖尿病：脂肪がインスリンの働きを妨げるため、血糖値がコントロールしづらくなります。
脂肪肝：肝臓に脂肪がたまり、臓器としての働きが低下します。
膵炎：高脂肪の状態が続くことで膵臓に炎症が起こり、命に関わるケースもあります。

心臓や呼吸器への負担

体重増加によって心臓が全身に血液を送る負担が増し、高血圧や心不全につながります。
首や胸、腹部に脂肪がたまることで気道が圧迫され、呼吸が浅くなったり、酸素不足を招いたりします。
特にパグやフレンチブルドッグなどの短頭種は呼吸器の構造が狭いため、肥満による影響がより深刻です。

皮膚や免疫への影響

皮膚の通気性が悪くなり、細菌や真菌の繁殖によって皮膚炎が起こりやすくなります。
首回りや耳の中に脂肪がたまると、外耳炎やかゆみの原因になることもあります。
免疫力の低下によって、感染症や腫瘍の発生リスクが上がる可能性が指摘されています。

熱中症のリスク

脂肪は断熱材のように働き、体の熱を逃がしにくくします。
暑い季節や運動時に体温が上がりやすく、重度の熱中症に発展する危険があります。

犬の体型をチェックする方法

体重だけでは肥満かどうかを判断できないため、「ボディ・コンディション・スコア（BCS）」を活用しましょう。

BCSは、犬の見た目や触った感覚をもとに、体脂肪の蓄積度を5段階や9段階で評価する方法です。

獣医師だけでなく、飼い主自身でも日常的に実施できるチェック法として広く用いられています。

BCSチェックポイント

肋骨の触診
手で胸の横を優しく触ってみましょう。理想体型では、薄い脂肪の下に肋骨が軽く触れる程度です。強く押さえないと肋骨がわからない場合は肥満傾向です。逆に骨が浮き出るようにすぐ触れる場合は痩せすぎの可能性があります。
腰のくびれ
犬を上から見下ろしたときに、胸の後ろから腰にかけてくびれがあるか確認します。砂時計のようなラインが見られれば理想体型です。真っ直ぐ、あるいは外に広がって見える場合は肥満のサインです。
お腹の吊り上がり
横から見たときに、胸の一番下から後肢にかけてお腹が少し持ち上がっていれば理想的です。地面と平行、もしくは垂れ下がって見える場合は脂肪がたまっている証拠です。

BCSと体脂肪率の目安（5段階評価）

BCS1（痩せすぎ）：骨格がはっきり浮き出て見える。体脂肪率5％以下。
BCS2（やや痩せ）：肋骨が容易に触れ、腰のくびれが顕著。体脂肪率6〜14％。
BCS3（理想体型）：肋骨が軽く触れ、腰のくびれとお腹の吊り上がりが確認できる。体脂肪率15〜24％。
BCS4（やや肥満）：肋骨が触りにくく、腰のくびれが不明瞭。体脂肪率25〜34％。
BCS5（肥満）：肋骨が厚い脂肪に覆われ、腰のくびれが消失。お腹が垂れ下がる。体脂肪率35％以上。

体重管理の実践ポイント

ダイエットの際は1週間に体重の1％程度の減量を目標にするのが安全です。急激な減量は脂肪肝や代謝異常を引き起こす可能性があります。
毎週同じ曜日・同じ時間に体重を測定し、記録をつけることで進捗がわかりやすくなります。
測定は飼い主が犬を抱っこして体重計に乗り、自分の体重を差し引く方法でも可能です。
減量や維持の過程でBCSを定期的にチェックし、見た目と体重の両面から健康状態を管理しましょう。

ダイエットに向いているドッグフード

犬の肥満対策には、カロリーを減らすだけでなく、栄養バランスを崩さないことが重要です。

そのため、ダイエット用のドッグフードには特別な設計が施されています。

ここでは特徴や選び方、最新の工夫について詳しく見ていきましょう。

特徴

高たんぱく質：筋肉を維持するために欠かせません。筋肉量が減ると基礎代謝も低下し、かえって痩せにくくなります。
低脂肪：エネルギー源としての脂肪を抑えることで、摂取カロリーを減らします。
高繊維設計：食物繊維が満腹感を与え、空腹によるストレスを和らげます。また便通の改善にも役立ちます。
低カロリー：通常のフードよりも1gあたりのカロリーが抑えられており、同じ量でも総摂取カロリーを減らすことができます。

具体的な選び方

軽度の肥満：一般的なペットショップでも手に入る「体重管理用」の総合栄養食を選ぶと良いでしょう。カロリー控えめでありながら、必要な栄養をしっかり摂取できます。
大幅な減量が必要な場合：動物病院で処方される「療法食」の使用が推奨されます。これらは栄養バランスやカロリーが厳密に設計されており、医師の指導のもと安全に減量できます。
シニア犬や持病がある犬：腎臓や心臓に負担をかけにくい設計のフードを選ぶことが重要です。必ず獣医師に相談しましょう。

どのくらいの量を与えればいいのか

ダイエット中の犬に与えるフードの量は、パッケージの目安に頼らず科学的な計算に基づいて決定することが重要です。

適切な量を知ることで、無理のない減量を実現し、リバウンドのリスクを減らすことができます。

ステップ1：安静時エネルギー要求量（RER）の計算

RERは、犬が安静時に生きていくために必要な最低限のエネルギー量です。以下の計算式で求められます。

RER = 70 × (体重kg^0.75)

例：体重10kgの犬
RER = 70 × (10^0.75) ≒ 400kcal/日

ステップ2：1日の必要エネルギー（DER）の計算

DERはRERに活動量や目的に応じた係数をかけて求めます。

減量中の犬：RER × 1.0（または0.8〜1.0）
去勢・避妊済みの成犬：RER × 1.6
活発な犬：RER × 2.0
シニア犬：RER × 1.2〜1.4

例：10kgの犬でダイエット目的の場合
DER = RER × 1.0 ≒ 400kcal/日

ステップ3：フードの量を計算する

フードのパッケージに記載された「100gあたりのカロリー」を確認し、DERに合わせて1日の給与量を算出します。

例：ドッグフードのカロリーが100gあたり330kcalの場合
400kcal ÷ 330kcal × 100g ≒ 120g/日

実践のポイント

分けて与える：1日2〜3回に分けると空腹感が和らぎ、食欲によるストレスを減らせます。
キッチンスケールを活用：カップで目分量を測ると誤差が大きいため、必ずスケールで正確に計量しましょう。
減量ペースの確認：1週間に体重の1％を減らすペースが目安です。減りすぎる場合は給与量を増やし、変化がない場合は少し減らす調整を行います。
おやつの管理：おやつも1日の総カロリーに含める必要があります。与える場合はフード量をその分減らしましょう。
定期的な見直し：体重が減ると必要なエネルギー量も変わります。1〜2か月ごとに計算をやり直すことが大切です。

運動の取り入れ方

食事管理に加え、運動は犬のダイエットに欠かせません。

運動は単にカロリーを消費するだけでなく、筋肉を維持し、基礎代謝を高め、ストレスを軽減する効果もあります。

特に肥満犬の場合は、無理のない運動習慣を身につけることがリバウンド防止にもつながります。

散歩

短時間から始める：最初は10分程度から始め、徐々に15分、20分と延ばしていきます。
バリエーションを持たせる：コースを変えたり、坂道や芝生を歩かせることで、筋肉をバランスよく使えます。
速度の工夫：通常のペースに加えて小走りや早歩きを取り入れると運動効果が上がります。
注意点：夏場のアスファルトは高温になるため、早朝や夕方の涼しい時間帯を選びましょう。

水泳

関節にやさしい運動：水中では浮力が働くため、関節に負担をかけずに全身を使った運動ができます。
持久力の向上：泳ぐ動作は有酸素運動であり、心肺機能の強化にも効果的です。
安全対策：初めての場合は浅瀬や犬用ライフジャケットを使用し、必ず飼い主が見守るようにしましょう。
頻度：週1〜2回取り入れるだけでも十分効果があります。

室内遊び

おもちゃ遊び：引っ張りっこやボール遊びは、短時間でも良い運動になります。
ノーズワーク：フードやおやつを隠して探させることで、嗅覚を刺激しながら運動と知育を兼ねられます。
トレーニング兼運動：お座り、伏せ、待てなどの基本トレーニングを繰り返すだけでも、筋肉を使い、頭の刺激にもなります。
天候に左右されない：雨の日や猛暑の日でも運動不足を防ぐ手段として最適です。

その他の工夫

遊びながら運動：飼い主と一緒に走ったり、軽いアジリティ用具を使って遊ぶのも効果的。
消費カロリーの意識：体重5kgの犬が30分の散歩で消費するカロリーはおおよそ50〜70kcal程度。運動と食事管理を組み合わせることで、無理のない減量が可能です。
無理をさせない：急な運動は関節や心臓に負担をかけるため、犬の様子を見ながら少しずつレベルを上げていきましょう。

ダイエット中の工夫と注意点

犬のダイエットは短期的な挑戦ではなく、長期的に継続していくことが成功のカギとなります。

そのためには、食事の切り替え方や空腹対策、停滞期の乗り越え方など、いくつかの工夫と注意点を押さえておく必要があります。

フードの切り替え

少しずつ混ぜて移行：新しいフードをいきなり与えると下痢や嘔吐などの消化不良を起こすことがあります。7日～10日かけて、旧フードに少しずつ混ぜながら割合を増やし、徐々に切り替えましょう。
味や食感への慣れ：犬は嗜好性に敏感です。最初は警戒して食べないこともあるため、ふやかして香りを立たせたり、トッピングを少し加えるとスムーズに移行できます。
観察の大切さ：切り替え期間中に軟便や嘔吐が見られたら、割合を減らして再度ゆっくり進めることが必要です。

空腹対策

小分けにして与える：1日分の食事量を2〜3回に分けて与えることで、空腹によるストレスを軽減できます。
水でふやかす：ドライフードをぬるま湯でふやかすことで体積が増し、少ない量でも満腹感を得やすくなります。
低カロリー食材の活用：キャベツやブロッコリーなど、犬が食べても安全な低カロリー野菜をトッピングするのも有効です。ただし消化しやすいように細かく刻んだり、軽く茹でたりすることが必要です。
食器の工夫：早食い防止のフードボウルやコングなどのおもちゃを使えば、食べるスピードを抑えつつ満足感を与えられます。

停滞期への対応

原因を見直す：ダイエット中、体重が一定のところで減らなくなる「停滞期」があります。これは基礎代謝が落ちたり、体が現状に慣れて省エネモードに入るためです。
カロリー再調整：体重が減った分、必要なカロリー量も変わるため、RERやDERを再計算して給与量を見直しましょう。
運動内容の工夫：散歩の時間やコースを変える、遊びの種類を増やすなど、新しい刺激を加えることで消費エネルギーを高められます。
おやつの管理：おやつは1日のカロリーの10％以内に抑えるのが基本です。フードをそのままおやつ代わりに与えるのも効果的です。